定年退職の日、田島康夫は妙な違和感を抱えて花束を受け取った。
四十年間働き詰めの人生が、段ボール箱ひとつで終わった。
「これから、俺は何をすればいい?」康夫の心に初めて空白が生まれた。
プロローグ
田島康夫は花束を受け取りながら、妙な違和感を覚えていた。四十年間勤めた商社の会議室で、部下たちが拍手をしている。温かい言葉をかけられ、記念品を渡され、笑顔で送り出される。すべてが型通りで、どこか他人事のようだった。
「長い間、お疲れさまでした」
上司の挨拶が終わると、あっという間に片付けが始まった。康夫のデスクは既に空っぽで、段ボール箱一つ分の私物しかなかった。四十年の軌跡が、これだけ。
エレベーターで一階に降りる間、康夫は考えていた。明日から何をすればいいのだろう。会社に行かない朝が想像できない。
外に出ると、三月の冷たい風が頬を刺した。長年通った道を歩きながら、康夫は小さく呟いた。
「これからどうしよう」
家に着くと、妻の美枝子がテレビを見ていた。振り返りもしない。
「お疲れさま」
形式的な言葉だけが宙に浮いた。
第一章 仕事人間
康夫が就職したのは高度経済成長の真っ只中だった。「会社のために尽くせば、会社が自分を守ってくれる」そう信じて疑わなかった。
朝は七時に家を出て、夜は十時過ぎに帰宅する。休日も接待ゴルフや部下の相談事で潰れた。家族との食事は年に数えるほど。息子の運動会も、娘の学芸会も、「仕事だから」という理由で欠席した。
「お父さんって、いつも忙しいね」
小学生の息子に言われた時、康夫は誇らしげに答えた。
「家族のために頑張っているんだ」
美枝子は何も言わなかった。ただ黙って食事の準備をし、子供たちの面倒を見ていた。康夫はそれを当然だと思っていた。自分は外で稼ぎ、妻は家を守る。それが正しい家族の在り方だと信じて疑わなかった。
息子が中学生になった頃から、家での会話が減った。康夫が帰宅する時間には、子供たちは既に部屋にこもっている。美枝子も「お疲れさま」と「お風呂沸いてます」程度の言葉しかかけなくなった。
「思春期だから仕方ない」
康夫はそう自分に言い聞かせた。仕事が順調だったから、家庭の小さな変化に気を留める余裕がなかった。
息子は有名大学に進学し、娘も短大を卒業した。二人とも一人暮らしを始め、滅多に帰ってこなくなった。美枝子との夕食は、テレビの音だけが響く静寂な時間になった。
「子供たちが独立して、ようやく二人の時間ができたな」
康夫はそう言ったが、美枝子は曖昧に微笑むだけだった。二人きりになって初めて、康夫は気づいた。妻と何を話せばいいのかわからない。共通の話題がない。
「まあ、定年したらゆっくり話そう」
康夫はそう思って、また仕事に没頭した。
第二章 空白の日々
定年から一週間が過ぎた。康夫は初めて「暇」というものを味わっていた。
朝、目覚まし時計に起こされることがない。何時に起きてもいい。何をしてもいい。その自由が、重い鎖のように感じられた。
朝食後、美枝子は家事に取りかかる。康夫はリビングでテレビを見る。ワイドショーの内容はどうでもよかったが、他にすることがない。十時になると、うとうとしてしまう。昼食を挟んで、また夕方までテレビ。
「何か趣味でも始めたら?」
美枝子が提案した。
「趣味か…」
康夫は考えた。読書は目が疲れる。映画も集中できない。運動は体力に自信がない。そもそも何が好きなのかわからない。
散歩を始めてみたが、十分も歩くと息が切れた。公園のベンチに座って空を見上げても、時間が過ぎるのが遅く感じるだけだった。
預金通帳を見ると、それなりの金額が記載されている。退職金も合わせれば、老後の生活には困らない。でも、そのお金をどう使えばいいのかわからない。
「何か欲しいものはないか?」
自分に問いかけてみても、答えが見つからない。
友人に連絡を取ろうと思ったが、電話帳を見て愕然とした。会社関係の人ばかりで、プライベートで付き合える人がいない。同期だった連中も、皆それぞれの人生を歩んでいる。今さら連絡を取るのも気が引けた。
家にいると、美枝子の視線が気になる。掃除機をかけようとすると邪魔になり、料理をしようとすると「いいから」と断られる。自分の居場所がない。
夕食の時、康夫は美枝子に尋ねた。
「俺がいると、邪魔かな?」
美枝子は箸を止めて、困ったような表情を見せた。
「そんなことないけど…慣れないから」
正直な答えだった。四十年間、昼間の家は美枝子だけの空間だった。突然夫がいる生活に戸惑うのは当然だった。
第三章 後悔の夜
夜中に目が覚めることが増えた。隣で美枝子が静かな寝息を立てている。康夫は天井を見つめながら、過去を振り返った。
家族との時間について
息子の野球の試合。康夫は一度も見に行ったことがない。
「お父さん、今度の日曜日、試合があるんだ」
小学四年生の息子が嬉しそうに報告した時、康夫は答えた。
「日曜日は接待ゴルフがあるんだ。また今度な」
息子の顔が曇ったが、康夫は気にしなかった。仕事の方が大切だと思っていた。
娘のピアノの発表会も、学芸会も、卒業式さえ出席できなかった。いつも「仕事だから」という理由で。美枝子一人に任せきりだった。
「もう少し早く帰れないの?」
美枝子が言った時、康夫は苛立った。
「家族のために働いているんだ。それがわからないのか」
でも本当は、家族のためではなく、自分の出世のために働いていたのではないか。昇進して、周りから認められることが何より大切だった。
夫婦関係について
美枝子と二人きりで旅行に行ったことがない。新婚旅行以来、夫婦だけの時間を作ろうとしなかった。
「たまには二人でどこか行きましょうか」
美枝子が提案した時も、「今は忙しい時期だから」と断った。いつも忙しい時期だった。
美枝子の誕生日を忘れることも多かった。結婚記念日も、大抵は仕事で帰りが遅くなった。美枝子は何も言わなかったが、きっと寂しかっただろう。
若い頃は、もう少し美枝子の話を聞いてあげればよかった。子育ての悩み、近所との付き合い、日々の小さな出来事。すべて「女性の話」として軽視していた。
趣味や人間関係について
学生時代、康夫は映画が好きだった。音楽も聴いたし、読書もした。でも就職してからは、そんな時間を「無駄」だと思うようになった。
同期や先輩たちとの飲み会も、次第に「仕事の延長」になった。純粋に楽しむのではなく、情報交換や根回しの場として考えるようになった。
大学時代の友人とは、いつしか年賀状のやり取りだけになった。「忙しい」を理由に誘いを断り続けているうちに、誘われることもなくなった。
もし週末の半分でも、自分の時間として使っていたら。読書や映画鑑賞、友人との時間、家族とのレジャー。そんな時間があれば、今の人生はもっと豊かだっただろう。
健康について
四十代から体調の変化を感じていた。腰痛、肩こり、不眠症。でも「まだ若い」と思って放置した。運動する時間も惜しんで、仕事に時間を費やした。
会社の健康診断で「要注意」の項目が増えても、「忙しいから」と精密検査を先延ばしにした。今思えば、健康こそが一番の財産だった。
お金の使い方について
稼いだお金の大部分は貯金に回していた。「将来のため」と言いながら、その将来に何をするかは考えていなかった。
家族での外食も「もったいない」と言って控えめにしていた。美枝子が欲しがった洋服も「贅沢だ」と言って反対した。でも接待費は惜しまなかった。仕事に関わることなら、いくらでも使った。
もう少し家族のために使っていれば、思い出も増えただろう。旅行、外食、プレゼント。お金で買えない幸せもあるが、お金で買える幸せもある。
コミュニケーションについて
何より後悔するのは、家族との会話を軽視していたことだ。
息子が学校での出来事を話そうとした時、「今、新聞を読んでいるから後で」と言った。娘が友達のことで悩んでいる時も、「お母さんに相談しなさい」と言って逃げた。
美枝子が近所の話をした時も、「そんなことはどうでもいい」と切り捨てた。でも家族にとって、それらは「どうでもいいこと」ではなかった。日々の生活そのものだった。
もし毎日十分でも、家族の話に耳を傾けていたら。相手の目を見て、真剣に聞いていたら。今とは全く違う関係性を築けていただろう。
若い頃の自分への言葉
二十代の自分に会えるなら、康夫は言いたい。
「仕事は人生の一部でしかない。家族との時間を大切にしろ。趣味を持て。友人を大切にしろ。健康に気をつけろ。お金は貯めるだけでなく、家族の幸せのために使え。そして何より、目の前にいる人の話をちゃんと聞け」
でも、あの頃の自分は聞く耳を持たなかっただろう。「今は仕事が大切だ。家族のことは後回しでいい」そう思っていた。
後悔の念が胸を締め付ける。でも時間は戻らない。息子は東京で結婚し、孫もいる。年に一度、正月に顔を見せる程度だ。娘は関西で働いており、連絡も稀だ。
「お父さんとは話すことがない」
娘が高校生の時に言った言葉を思い出す。その時は反抗期だと思っていたが、今になって本当の意味がわかった。
康夫は自分の人生を振り返った。確かに仕事では成果を上げた。昇進もし、それなりの地位についた。でもそれ以外に何があるだろう。家族からの愛情、友人との絆、人生を豊かにする趣味。何一つ築けていない。
「俺は何のために生きてきたんだろう」
暗闇の中で、康夫は呟いた。
「成功」の定義を間違えていたのかもしれない。お金を稼ぐこと、昇進することだけが成功ではない。家族に愛され、友人に慕われ、自分自身が満足できる人生こそが真の成功なのではないか。
でも、そんなことに気づくのが遅すぎた。
第四章 最後の抵抗
康夫は何とか現状を変えようと思い立った。新聞の折り込み広告で見つけたカルチャースクールに申し込んだ。「初心者歓迎・陶芸教室」という文字に惹かれた。
初日、教室に足を踏み入れると、そこには主に女性たちがいた。皆、和気あいあいと話をしている。康夫一人が場違いな存在に感じられた。
「初めての方ですね」
講師の女性が声をかけてくれたが、康夫は緊張で手が震えた。粘土をこねながら、周りの笑い声が遠く聞こえる。
「お疲れさまでした」
一時間で帰ることにした。受講料は無駄になったが、もう一分もいられなかった。
公園で散歩中、ベンチに座っている老人に話しかけてみた。
「良い天気ですね」
老人は振り返ると、警戒するような目で康夫を見た。
「はあ」
素っ気ない返事だけで、すぐに立ち去ってしまった。康夫は一人取り残された。
デパートに行き、何か買い物をしようと思った。お金はあるのだから、欲しいものを買えばいい。紳士服売り場、時計売り場、書籍売り場を回ったが、どれも心に響かない。結局、何も買わずに帰宅した。
「お金があっても幸せになれない」
この言葉の意味を、康夫は身をもって理解した。
高級レストランで一人食事をしてみたが、味がわからなかった。美味しいはずの料理も、一人で食べると味気ない。
何をやってもダメだった。康夫は自分の無力さを痛感した。六十五年生きてきて、何一つ身についていない。仕事以外の自分には、何の価値もないのかもしれない。
第五章 小さな光
ある朝、美枝子が起きてこなかった。様子を見に行くと、熱で苦しそうにしている。
「大丈夫か?」
「風邪かもしれません」
美枝子の声は弱々しかった。康夫は慌てて体温計を持ってきた。三十八度五分。
「病院に行こう」
「大丈夫です。薬を飲んで寝ていれば治ります」
でも、美枝子の状態は心配だった。康夫は買い物に出かけ、解熱剤とスポーツドリンクを買ってきた。おかゆも作ってみた。不慣れな手つきだったが、何とか形になった。
「はい、これ」
おかゆを差し出すと、美枝子は驚いたような顔をした。
「お父さんが作ったの?」
「まあ、おかゆくらいなら」
美枝子は少しずつ食べてくれた。
「ありがとう」
久しぶりに聞いた感謝の言葉だった。康夫の胸に、温かいものが広がった。
その日、康夫は美枝子の看病をした。額に冷えたタオルを当て、水分補給を勧め、部屋の換気をした。特別なことは何もしていない。でも、誰かのために何かをするということが、こんなにも心を満たすものだとは知らなかった。
夕方、美枝子の熱が下がった。
「お疲れさま。おかげで楽になりました」
美枝子の笑顔を見て、康夫は思った。これが「役に立つ」ということなのかもしれない。お金を稼ぐことだけが価値ではない。身近な人を支えることにも、大きな意味がある。
その夜、康夫は久しぶりにぐっすり眠った。
第六章 歩き出す
美枝子が回復した翌日、康夫は散歩に出かけた。いつものコースを歩いていると、道端にゴミが落ちているのが気になった。空き缶、タバコの吸い殻、お菓子の袋。
何の気なしに拾い始めた。特に誰かに頼まれたわけでもない。ただ、汚れた道を見ているのが嫌だっただけ。
一時間ほどで、レジ袋一杯分のゴミが集まった。ゴミ箱に捨てて振り返ると、道が少しきれいになっている。小さな達成感があった。
翌日も、その次の日も、康夫はゴミ拾いを続けた。時々、近所の人に会釈されることもある。特別な技術も資格も要らない。でも、確実に誰かの役に立っている。
図書館に行き、料理の本を借りてきた。「男性のための簡単料理」という本を選んだ。家に帰って、夕食を作ってみることにした。
最初はうまくいかなかった。野菜の切り方がわからず、味付けも失敗した。でも、美枝子は文句を言わずに食べてくれた。
「次はもう少し塩を控えめに」
アドバイスをもらい、翌日改善してみた。少しずつ上達していく実感があった。
「お父さんが料理するなんて、思いもしませんでした」
美枝子が笑いながら言った。
「俺だって、まさか自分が料理をするとは思わなかった」
二人で笑った。久しぶりの会話だった。
第七章 ゆるやかな日々
三ヶ月が過ぎた。康夫の生活は劇的に変わったわけではない。息子とは相変わらず距離があるし、友人ができたわけでもない。でも、日々の中に小さな充実感を見つけられるようになった。
朝のゴミ拾いは習慣になった。道端に咲く花に気づくようになったし、季節の変化も感じられる。
料理の腕も少しずつ上がった。美枝子が「美味しい」と言ってくれる回数が増えた。レパートリーも徐々に広がっている。
図書館にも通うようになった。小説を読むのは学生時代以来だったが、今は集中して読める。時間を忘れて本の世界に浸る楽しさを思い出した。
何より変わったのは、美枝子との関係だった。毎日の小さな出来事を話すようになった。テレビを見ながら感想を交換したり、明日の食事のメニューを相談したり。些細なことだが、これが夫婦の会話なのかもしれない。
ある夜、美枝子と一緒にテレビを見ながら、康夫は思った。もし四十年前、いや、せめて二十年前に、今の自分のような考え方ができていたら、どんなに違っただろう。
家族との時間を優先していたら。週末の半分だけでも家族のために使っていたら。息子の野球の試合を見に行き、娘のピアノの発表会に出席していたら。今頃、孫たちとも違う関係性を築けていただろう。
美枝子との関係も、毎日十分でも彼女の話に耳を傾けていれば、こんなに長い沈黙の時間を過ごすことはなかった。「仕事が忙しい」を理由に、大切な人とのコミュニケーションを後回しにしていた。
趣味を持ち続けていれば、定年後の空虚感もなかっただろう。学生時代に好きだった映画や音楽、読書。すべて「時間の無駄」として切り捨ててしまった。でもそれらこそが、人生を豊かにする要素だったのだ。
お金の使い方も間違っていた。家族との旅行や外食、美枝子への贈り物を「もったいない」と言って控えていた。でも今、一人で高級レストランに行っても何の喜びもない。誰かと一緒に分かち合ってこそ、お金の価値がある。
健康管理も怠っていた。四十代から続く腰痛も、きちんと治療していれば今頃改善していたかもしれない。運動する習慣があれば、もっと活動的な老後を送れただろう。
何より、人間関係を大切にすべきだった。同僚との付き合いも、大学時代の友人も、すべて仕事の効率を優先して切り捨ててきた。今、誰かと気軽に話せる相手がいれば、どんなに心強いだろう。
「お父さん、変わりましたね」
ある夜、美枝子が言った。
「そうかな?」
「前は、いつもイライラしていた。今は穏やかです」
確かに、以前は常に何かに追われているような気持ちだった。今は違う。時間がゆっくり流れている。
息子から電話があった時、康夫は最近始めたゴミ拾いの話をした。
「そんなことしてるの?」
息子は驚いているようだった。
「誰かの役に立てるし、散歩がてらできるから」
「へえ、お父さんらしくないね」
らしくない、と言われて康夫は考えた。これまでの自分らしさとは何だったのだろう。仕事一筋、家庭を顧みない、それが自分らしさだったのか。
もしかすると、今の自分の方が本当の自分らしいのかもしれない。
最近、康夫は若い人たちを見ると複雑な気持ちになる。電車で疲れた顔をしたサラリーマンを見ると、昔の自分を重ね合わせてしまう。
「君たちは、俺と同じ過ちを犯すな」
そう声をかけたい衝動に駆られる。
家族との時間を大切にしろ。仕事だけが人生ではない。趣味を持て。友人を大切にしろ。健康に気をつけろ。お金は使ってこそ意味がある。そして何より、目の前にいる人の話をちゃんと聞け。
でも、きっと彼らも康夫と同じように答えるだろう。「今は仕事が大切なんです」と。
人は経験しなければ分からない。頭では理解していても、身に染みるまでには時間がかかる。康夫も、六十五歳になってようやく気づいたのだから。
それでも、もし誰かが康夫の話に耳を傾けてくれるなら、伝えたい。失ってから気づく大切さほど、切ないものはないと。
エピローグ
春が来た。公園の桜が満開になり、康夫はいつものようにゴミ拾いをしていた。
「毎日お疲れさまです」
声をかけられて振り返ると、老夫婦が立っていた。
「いえいえ、散歩のついでですから」
「でも、おかげで公園がきれいになりました。ありがとうございます」
老婦人が深々と頭を下げた。
「お住まいは近くですか?」
「ええ、向こうのマンションです」
「私たちも同じマンションです。お見かけしたことがあります」
そんな会話から、三人は仲良くなった。老夫婦は康夫より少し年上で、定年後は夫婦で旅行を楽しんでいるという。
「田島さんは、趣味は何ですか?」
尋ねられて、康夫は少し考えた。
「ゴミ拾いと料理と散歩、でしょうか」
「いい趣味ですね」
老人が笑った。
「料理ができる男性は素敵です」
老婦人も微笑んでいる。
趣味、と言えるほど大げさなものではないが、確かに康夫にとって大切な時間になっている。
「今度、お時間があるときにお茶でもいかがですか?」
老夫婦に誘われ、康夫は喜んで応じた。
家に帰ると、美枝子が庭で花の手入れをしていた。
「今日はどうでした?」
「近所のご夫婦と知り合いになった」
「それは良かった」
美枝子が笑顔で応えた。
夕食の準備をしながら、康夫は思った。これでいいのかもしれない。華々しい人生ではないが、穏やかで温かい日々。誰かのために何かをし、感謝される。そんな小さな幸せの積み重ね。
六十五歳から始めた「新しい人生」は、決して派手ではない。でも確実に、康夫の心を満たしている。
木漏れ日が窓から差し込んでいる。康夫は微笑みながら、今日という日に感謝した。
人生に「遅すぎる」ことはない。そう信じて、康夫は明日を迎える準備をした。
おわり
おわり
最後まで読んで頂いて有難うございました。
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